くらげです。今回は奇蹟の大藤についてpart1です。
奇蹟の大藤とは栃木県足利市にあるあしかがフラワーパークの
大藤のことです。
以前あしかがフラワーパークの大藤の移植と経営の再建を成功させた
塚本こなみさんを紹介しているところで少し記載しましたが、
今回は
- あしかがフラワーパークについて
- 大藤の引っ越し大作戦
- 大藤の引っ越し完了と移植
について紹介したいと思います。
あしかがフラワーパークについて
- 「あしかがフラワーパーク」の前身は「早川農園」といいます。
- 「早川農園」は地元の大地主早川和俊さんが1920年ごろ庭に植えた
4本の藤の木を近隣の人にも見てもらえるように庭を改造して作られたものです。
当時は足利市堀込町(現・朝倉町)にありました。
- 1997年4月「早川農園」は「あしかがフラワーパーク」として
足利市迫間町に引っ越しをして開園しました。
樹齢160年、広さ1000㎡、600畳にもおよぶ大藤の棚は世界一です。
- それぞれの季節の木々や花々の美しさ、ほとばしる生命力、躍動感を感じ、
訪れた人が癒されるように、1年間を8つの花のステージで表現しています。
- 木々や花々の活動が弱まる晩秋から冬にかけては、イルミネーションによる
植物との共演も見られます。
- 木々や花々、イルミネーションの醸す景色・情景は数々の賞に選出されています。
大藤の引っ越し大作戦
①<大藤の引っ越しが決まるまでの経緯>
- 見渡す限り田園地帯だった「早川農園」の場所は
街の発展と共に周辺が市街地化されていきました。
- 地域の再開発計画が進み、藤をはじめすべての花木の移転が検討され始めました。
- しかし専門家の間では藤の移植ができるのは、幹の太さが60cmくらいまでと言われて
いたのに、あしかがフラワーパークの大藤の幹の太さは1m以上もあったので、
4年間移植を引き受けてくれる人が見つからないまま月日が過ぎてしまいました。
- 1994年たまたま新聞で塚本こなみさんの掲載されている記事を見た早川氏の娘さんが
わらをもつかむ気持ちで塚本さんに藤の移植の依頼をしました。
- 塚本さんは足利市に実際に大藤を見に来てこんなに大きな藤があるなんて・・・と
あまりの風格、見事さに息をのみ、大藤のあふれる生命力を感じ、
移植を引き受けることを決意したそうです。
- それから試行錯誤の2年間の準備期間を経て
1996年2月不可能だと言われた大藤の引っ越し、移植に成功しました。
そして
- 1997年4月「早川農園」は「あしかがフラワーパーク」として正式に開園しました。
藤の引っ越し、移植までに2年、開園までに1年
3年がかりの大プロジェクトでした。
②<大藤の引っ越しまでのおもな準備>
- 花がら摘み
花びらが散った後、実をならせると木の栄養をとられてしまうので、
花房の根もとにある芽だけを残して実がならないように切り取りました。
- 根切り
運びやすい大きさに根を切りました。
四方八方に60mも伸びていた大藤の根を8mのところで切り、水力を利用して堀り出しました。引っ越し用の根を作るためミズゴケを巻き、再度土の中に埋め戻しました。
1本の藤に毎日15~16人がかりで1週間かかりました。
- 藤棚の縮小
4本の大藤の中で1番大きな藤棚はたて30m、よこ20m、600㎡もあるので
トレーラーの荷台にのる大きさまで枝を切り、藤棚を縮小させなければなりません。
トレーラーの荷台 たて12m、よこ4m藤棚の縮小は2回に分けて行いました。
たて12m、よこ6mまで枝を切りました。
- 切った枝の消毒
藤は切り口から腐りやすいので消毒が必要です。
でも当時は藤のための傷口用の薬がなくいろいろ試すものの効果がありませんでした。
そのため、アブラムシやカミキリムシがつき、虫の駆除のための消毒を
何回も行なわなければなりませんでした。
- 引っ越し先の土作り
引っ越し先はもともとヨシの生い茂る湿地帯で水はけが悪い上に、
土は粘土質のため水を通しにくく、酸素も少ないという
植物の生長にとっては最悪の条件でした。
~土の改良~
- 粘土質の土の上に、こぶし大より少し小さいくらいの石を
250t、50cmの厚さに敷き詰めました。
- その上に、木炭15t、20cmの厚さで並べました。
- さらにその上に、引っ越し前に藤のまわりにあった土を
30cmの厚さに敷きました。
- 土の量は大型ダンプで約500台分にもなりました。
- クレーンで釣り上げる時の幹の保護
藤の幹はつるの束でできているのでとても柔らかく、他の木と同じように扱うと自分の重さに耐えきれずに食い込んでしまうため、幹を保護する必要がありました。
- 藤の全体の重さは約10t
- 幹を守りながら固定するために石膏でギプスし、柔らかい幹を保護しました。
- 石膏ギプスは厚さ5cmになるまで巻く必要があり、
1本の藤に4人がかりで4時間かかりました。
参照:https://www.nippon.com/ja/people/e00096/
③<大藤の移動>
- 4本の大藤は4日間、それぞれ1本ずつ行いました。
- 早朝5時
移動距離20kmの道を最高時速30kmで進み1時間かけて移動しました。
- 早朝4時から交通整理に当たった人数約100人
- トレーラー前後に警備車、護衛車、トレーラーの先導車
藤をのせたトレーラー、後尾車、合わせて13台
全長200mの大行列になりました。
参照:https://www.nippon.com/ja/people/e00096/
大藤の引っ越し完了と移植
大藤は
環境の変化をなるべく少なくするため
引っ越し前と同じ方向から太陽の光がうけられるように
もとあった場所と同じ方角を向くように
細心の注意を払いながら丁寧に植えられました。
これによって
空前絶後、前代未聞の大藤の引っ越しは完了です。
作業にかかわった人たち…
建設、輸送、鉄骨、造園の専門家をはじめ大勢の職人さんたち
延べ人数で約2000人
費用…約1億円
多くの人の尽力の下、今なお大藤たちは、輝かしく生きて
私たちにその圧巻の姿を見せてくれているわけです。
あしかがフラワーパーク
栃木県足利市迫間町607
TEL0284(91)4939
くらげ
ぜひ一度行ってみたいなあと思うきっかけになれば嬉しいです。
参考出典
- 「木の声がきこえますか」池田まき子著 岩崎書店
- 「奇跡の木」葉祥明 絵・文 塚本こなみ原作 下野新聞社
- 「おおふじひっこし大作戦」塚本こなみ 文 一ノ関圭 絵 福音館書店
コメント